研究概要 |
(1)平成21年度に行った,色刺激による脳活動変化の分類解析による研究により,脳内での色の情報表現は赤/緑,青/黄色の成分ではなく,個々の色について感度をもつ細胞の応答で表現される事を示した.この成果ついて,国際研究会における招待講演において発表を行った.さらにこの成果については論文として投稿し,掲載された. (2)色と運動の情報の統合を調べる実験を行い,国内の研究会で成果発表を行った.赤と緑のドットが逆方向に動くパタンを全画面に表示し,同じ色の中心視野付近のドットと周辺視野のドットの運動方向を逆にすると,周辺視野のドットの運動方向が時々中心視野と同じ方向になる錯視(Wu, Kanai & Shimojo, 2004)を用いて実験を行った.色と運動の統合を調べる先行研究は,刺激画像と知覚との関係について議論できる条件での実験を行っていなかったが,錯視を生じる実験刺激を用いると,被験者の知覚が確率的に切り替わる上,その知覚の報告と脳活動との比較を行うことにより,脳活動の中で特に被験者の知覚と密接に関連する部位を抽出することが可能となる.分類解析を行った結果,被験者の知覚に関係なく,刺激画像に対応する脳活動で分類解析を行った場合に関与が確認された部位と,被験者の知覚に対応して分類解析を行った場合に関与が確認された部位は異なり,後者には第一次視覚野が含まれなかった.先行研究では第一次視覚野においても色と運動の情報が統合されていたという報告がされていたが,我々の研究の成果が正しいとすると,第一次視覚野には色と運動の情報のどちらもが存在していたが,必ずしも知覚的な統合と関与していなかった可能性が示唆される.この成果は平成23年度に外部発表を行う予定である.
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