研究課題
学齢期の自閉症児・定型発達児を対象として、顔からの注意の解放とモノからの注意の解放との間の比較検討をした(実験1)。さらに、顔に対する注視パターンを操作し、実験2では目の領域に、実験3では口の領域に注視を促すことにより、顔からの注意の解放について再検討した。実験には、武蔵野東学園の児童・生徒が参加した。定型発達児では、顔を自由に見る実験1および目の領域を注視する実験2において、顔からの注意の解放はモノからの注意の解放より遅かった。一方、口の領域を注視する実験3では、顔からの注意の解放に特異的な遅延は見られず、目の領域を注視することが顔からの注意の解放の遅延と密接に関わっていることが示唆された。自閉症児では、顔を自由に見る実験1において、定型発達児とは異なり、顔からの注意の解放はモノからの注意の解放と変わらなかった。しかし、実験2で目の領域を注視すると、顔からの注意の解放は遅いという効果に、自閉症児と定型発達児の間で違いは見られず、自閉症児と定型発達児のパフォーマンスは同様の傾向を示すことが分かった。本研究では、アイトラッカーを用いていないため、実験1で自閉症児が定型発達児にくらべて目の領域への注視が弱かったかは確実ではない。今後は、目の領域への注視量と顔からの注意の解放の遅延に関して、アイトラッカーを用いて検討したい。また、本研究では、眼球運動(EOG)と並行して脳波(electroencephalogram ; EEG)も計測している。中心刺激から周辺刺激へ目を動かす直前、中心-頭頂部で振幅が大きくなるサッケード関連電位(saccade-related ERPs)の解析により、行動と脳機能の関係も明らかにしたい。
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Child Development 80
ページ: 1421-1433
ページ: 1134-1146