研究課題/領域番号 |
21330171
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 健一郎 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 准教授 (80291582)
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研究分担者 |
藤澤 健一 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (00301812)
武藤 拓也 国士舘大学, 文学部, 准教授 (50290664)
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キーワード | 近代沖縄 / 教育実態 / 『沖縄教育』 / 沖縄県初等教育研究会 / 標準語教育 / 府県教育会機関誌 / 九州沖縄八県連合教育会 / 奄美教育史 |
研究概要 |
(1)『沖縄教育』や沖縄県初等教育研究会の刊行物などに依拠して、1930年代半ばの標準語教育政策とそれに伴う実践および実態を明らかにした。1936年7月、沖縄県庁は沖縄人の精神作興の一環として標準語教育とその励行を政策課題とし、県知事の訓示とともに学校長会議に諮問した。学校長会議はそれを議論、答申し、実践に取り組もうとするが、そこには標準語が未熟であることから生じる沖縄人の損失をなくし、差別から脱却し、沖縄の振興を図ろうとする意図が込められていた。そのような齟齬をはらみつつ、この標準語励行は国民精神総動員運動以降につながっていった。 (2)『沖縄教育』の新たなる発掘ができ(184号および253号)、それらの史料紹介記事を発表するとともに(『沖縄タイムス』紙)、復刻版第37巻を新設することとした(2012年5月刊行予定)。また『沖縄教育』の終焉を全国的な状況に位置づけるべく、全府県教育会機関誌の終刊状況を明らかにした。 (3)沖縄県令規の整理を進め、沖縄が他府県と比較して特別な教育制度であった第二次小学校令期(1890年代)を中心に、沖縄の初等教育制度の特徴を明らかにした。 (4)『沖縄教育』復刻を終え、それを共有財産として、これからの近現代沖縄史研究をどのように展開していけるか、いくべきかを、沖縄学研究者の集うシンポジウムにおいて公開により実施した。 (5)九州各県の教育会雑誌の収集整理により、九州沖縄八県連合教育会の開催状況および義論を整理し、各県の対応の違いなどにより、沖縄における教育実態を描出する手がかりを得た。(藤澤担当) (6)奄美教育史に関する基礎史料の一つとして、鹿児島県教育会機関誌『鹿児島教育』を能う限り悉皆調査し、そこに掲載されている奄美関係記事の一覧を作成し、今後の基盤を築いた。(武藤担当) なお(3)~(6)は口頭発表や史料整理にとどまっており、今後、図書や論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『沖縄教育』の復刻版を編集刊行しつつ、それらはもちろん、さらなる関連史料の調査収集整理により、2009~2011年度にかけて、「教えと学び」の具体像を解明する論文、それに関連する基礎的な史料紹介、復刻版を刊行し終えて以降の近現代沖縄史研究のあり方に関するシンポジウム開催などを実施できているため。また発表には至っていないが、史料整理を終えているなどのものもあり、それらの紹介や、それらに基づく図書刊行や論文執筆も期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
『沖縄教育』をはじめとした諸史料を共有したうえで、各個人による研究推進を基礎としつつ、引き続きメール等での連絡に加え、適宜、沖縄等で研究会をもち、研究を継続していく。現時点において、研究計画の変更や、研究を遂行しがたい問題点は生じていない。
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