研究課題/領域番号 |
21330175
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
的場 正美 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40142286)
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研究分担者 |
松下 晴彦 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10199789)
柴田 好章 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70293272)
杉本 憲子 茨城大学, 教育学部, 准教授 (70344827)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 教育学 / 教育方法 / 授業分析 / 授業研究 / 解釈学 / 認知理論 / 活動理論 / 問題解決 |
研究概要 |
【研究目的】本研究は、授業過程の相互作用を記述・解釈し、授業過程に介在する要因を抽出とその要因と諸理論の諸概念と照応し、①記述記号と思考形式の関係、②記述記号の可逆性、③動作の記述可能性、④分析単位の妥当性、⑤解釈の明示性、⑥抽象の程度という6点の妥当性を検証することによって、1)子どもの認知的レベル、2)相互作用的レベル、および3)教師の認識的レベルの諸要因相互の関連を明らかにすることを目的としている。 【研究成果】平成24年度の重点的課題に照らしてその研究成果を述べると次のようである。1)記号の形式と思考の関係(課題1):子どもの発言を解釈し、その解釈を記号によって表記する場合、記号の形式の論理計算の順序性を前提に第3者が再解釈する事例が見られた。それを回避するために、強調したい語句を最初に置く、後ろの語句が前の語句を限定するなど一定の規則性を設けることがが記述形式に必要であることが解明された。2)抽象化の程度(課題7):子どもの発言の解釈は、発言の文法的な解釈のレベルだけでなく、問題解決の過程や課題解決の過程、あるいは思考傾向を考慮して解釈されるレベルがある。後者のレベルを明示するには、問題の発生状況を示す記号、解決の方向を示す記号など新たな記号の開発が必要とされる。3)新たな研究課題として、仮説形成法は仮説を相対化できるが、その相対化の妥当性を検証するためにアプダクションとの関係を解明することによって仮説を重層的に形成できる見通しを得た。4)活動理論の諸概念との照応は明確な成果が出されなかった。 【研究成果の公表】成果の一部は、中部教育学界、日本教育方法学会、日本カリキュラム学会、The World Association of Lesson Studies International Conference 2012 等で個人と共同で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、1)分析単位の妥当性の検証、2)記号の全てのグループに関して、蓄積された事例をもとにした記号による解釈の明示性を検証、3)抽象化の程度の検証、4)活動理論の諸概念との照応、5)教師の認知論の抽出を具体的達成目標にした。このうち1)、2)、3)については、上記の研究実績の概要に示した通りの成果があった。また5)に関しては、明確な成果はなかったが、研究実績の概要の2)で述べたように、発言内容の文法的解釈ではなく、問題解決過程として解釈する記述する方向性がみえてきた。このことに関しては、学会において解釈学の問題の中で論じた。しかし、研究目的の4)の活動理論の概念構造と要因の関連の照応に明確な成果がだされなかった。その意味でやや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績、現在までの達成度を考慮して、次のように今後の研究を推進したい。 第1は、これまで開発した記号を整理し、体系的に関係づけるとともに、既存の記号の関係の意味を限定するルールを作成する。第2は、認知理論の諸概念の関係とその構造はすでに解明したので、活動理論の諸概念とその構造を中核的な要因を中心に部分的に作成し、拡大する方策をとる。第3は、教師の認知レベルを教師の発言の記号による解釈の明示化を通して、解明する。第4に、限定して作成するアブダクションと仮説の形成の関係の究明を新たに研究課題に加える。
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