研究概要 |
東日本の調査に関する実績としては,平成22年度に実施した山梨県南アルプス市と北杜市への訪問調査の成果を日本教育経営学会において報告した。どちらの市も中小規模の都市であり,学校からの予算要求を教育委員会が査定し学校配当予算額を決定していることから,各教科別の予算見積もりが大きな意味をもっていること,予算見積もりの様式としても教科単位の経費積算の重要性などを明らかにした。また横浜市のように総額裁量的な学校予算配分をしている自治体とくらべて自由裁量よりも合規性の方がやや重視される傾向にあることも指摘した。 西日本の調査に関する実績としては,研究分担者が宮崎県五ヶ瀬町,小林市に導入されたスクールサポートセンター等の訪問調査を行い,なおまだ教育課程と学校予算との関連性が明確でないことから,事業型予算編成の必要性を主張した。その成果は論文,竺沙知章「学校における財務マネジメントの意義と課題」として京都教育大学大学院連合教職実践研究科紀要に掲載予定である(印刷中)。 平成22年度に収集した公立小中学校10校分の支出データを継続して分析し,教授活動,サポート活動,教育外サービスの3分類をさら中分類・小分類にわけて集計した。この調査では公費(学校配当予算)と私費(保護者からの徴収金)の双方のデータを収集しており,配当予算と同額がそれ以上の私費が徴収されていること,公費の半分以上は一般管理経費的なサポート活動に充てられていること,教科の中では理科や保健体育などに比較的多く公費が使われていることなどを明らかにした。このように公立学校で現実に支出されたデータを活動別・教科別に仕分けしてコストを計算した例はほとんど例がない。なお,この成果である論文,本多・末冨・田中「学校レベルの財務データから見た学校の自律性」を日本教育行政学会年報に投稿し,審査中である。
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