研究概要 |
第一に,中央から地方への公教育の権限委譲に,地方の教育アクターがどのように対応し,それが教育の供給に質的・量的にどのような変化を与えているかを探るために,これまで一定程度の研究蓄積のあるフィールド(愛知県犬山市・宮崎県)で追跡調査を実施し分析を行った。愛知県犬山市では,05年と08年に実施した教員・子ども・保護者への質問紙調査を比較することを通して,地方における教育改革の主な担い手である教師の意識の変化と,そのもとで教育の受け手である子どもや保護者の意識の変化を分析し,日本教育学会での報告を行った。この成果をもとに報告書を作成中であり,2010年の図書刊行を目出している。 また,宮崎県に関しては,2009年3月刊行の『教員評価』(岩波ブックレット)をもとに,研究者の分析に対する地方の教育委員会の反応を受けてリライトを重ね,地方の教育への教員評価制度の浸透過程を明らかにすることを通して,教員の「専門性」にどのような影響を与えているのかを明らかにするとともに,教育改革の効果を社会学的の評価する成果を,図書として2010年初夏に刊行予定である。 第二に,財政破綻状況が報告される地方自治体において,財政問題が教育行政改革とどのように関連づけられて議論されていくのか,また,そこに地方分権改革がどのように絡むのかを明らかにすることを目的として,本年度は対象地選定を行い,北海道の空知支庁・宗谷支庁で予備調査を行い,財政状況や教育予算の変化等の基礎的資料の収集を終えた。2010年度は,収集した資料の分析を行うとともに,不足資料を再収集しながら分析を進める予定である。
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