本研究の目的は、「社会参画」に着目し、その視点を生かした社会科(地理歴史科・公民科)教育をどのように構想できるのかを、理論的かつ実践的な追究を通して明らかにすることであった。そこで、研究の最終年では、前年度までに検討した「社会参画」について、より広い枠組みとして捉えることにより、様々な実践の可能性を見いだした。 まずは、教室をベースとした授業でも、「社会参画」の授業が可能であることを示し、大学院生による研究授業を実施した。むろん、教室だけでなく、野外調査をすることで、より一層「社会参画」を子どもに認識させることができた。この実験授業の結果は、『社会参画に基づく社会科(地理歴史科・公民科)授業の構想ー高度な授業力育成を目指す筑波大学教育研究科社会科教育コースの取り組みー』としてまとめた。この報告書では5件の実践の結果を報告した。 また、「社会参画」では、具体的な地域社会の課題を取り上げることが多いために、学校と地域社会がどのように関わり、学校がどのように地域社会の授業を行い「社会参画」にいたっているのかといった基本的な調査の積み重ねも重要である。このような10年にわたる調査をまとめたのが、『地域と教育ー地域における教育の魅力』(井田仁康編著、学文社)である。この書は地域と教育との関わりを調査を通して明らかにするだけでなく、大学院生の教育方法の一つとして方法論として提示することも目的の一つとなっており、本研究費の成果も反映されている。 さらに、国内だけでなく世界的な観点から、国際地理オリンピックの問題を分析し、世界的なスタンダードしての「社会参画」を考察した。この成果は、2013年に京都でおこなわれる国際地理オリンピックの問題作りに反映され、国際的な視野からの地理教育における「社会参画」を普及させた。このように本研究では「社会参画」を実践の中で位置付けたことを特徴としている。
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