研究概要 |
本年度は読み書き障害への支援技術適用のために、読み困難や書き困難な状態について基礎データを得ることを目的とし、小学生の書字および読み行動をデジタルペンを用いて時系列的に解析した。 書字については、石川県の小学校1年から6年生まで618名の視写(書き写し)および聴写(聞き取り)データを測定した。視写において、仮名は3年生まで、漢字は5年生まで書字速度が向上し、仮名は4年生まで、漢字は5年生まで停留時間が減少することが明らかになった。エラーについて学年差は見られなかった。聴写についても学年とともに速度は向上するが、聞きながら書く児童と聞いてから書く児童が存在することが明らかになり詳細な分析を継続中である。 音読については石川県の小学校1年から6年生まで618名、長野県の小学校の558名の児童に対し、指定した文章を提示し、同時に分かち書き、ルビ振り、拡大、縮小、行間拡大を行った課題についても読み上げてもらった。平均読み速度については,低学年・中学年・高学年という括りで,男女とも同様に上昇するという結果だった。読み速度が平均よりも1.5標準偏差以上遅い児童は,4~6年で2%強と,文科省の,「読む」又は「書く」に著しい困難を示す割合2.5%という報告と近似の値であった。それらの児童に対しては,レイアウト変更等によって読み速度が改善することが示されたが,レイアウトのどの変更が読字のパフォーマンスを改善するかについては一貫した結果は得られず,児童によって異なっていた。 読み書きの遅れのある児童と研究室に相談のあった20事例を詳細に分析すると、視知覚困難に起因するものと聴覚困難に存在するものに大別できるだけでなく、様々なパターンが示されており、デジタルペンを用いた時系列的分析が支援技術の適合判断の資料として効果的であると考えられる。
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