本年度は、開発された評価システムを用いた解析に基づき、読み困難、書き困難それぞに様々な支援技術との適合性と効果について検証した。 まず、大学内の相談センターに読み書き困難を主訴に来訪した60人に評価を実施し、支援技術の適用を試みた。読み障害に関して視覚面で困難がある子どもには拡大が、音韻性の読み障害にはテキストリーダが有効であった。一方、高学年では読書そのものが嫌いで、支援技術利用のモチベーションが低く使いこなせない子どももいた。早期導入による学習の遅れを防ぐ必要性が示された。 次に、タブレット型PCに様々な支援技術を組み込み小学校の国語の集団授業の中で活用してもらい評価を行った。このシステムは、タッチした行の文章を読み上げるものであり、スワイプの操作に対応したページ送り・戻しの機能、ピンチイン・アウトの操作に対応した画面の拡大・縮小機能も有した。スクリーニング検査で読み困難が示された子どもを含む23名がこのシステムを使用して授業を受けた。読解の流暢課題の成績が低く、ディコーディング処理に困難を有していると考えられる子どもは、最初は読み上げ機能を使用して授業に参加し、途中で紙の教科書へと使用形態を変化させた。ディコーディングの処理にはさほど困難がないが、単語発見課題の成績が低く読解にかかわる視知覚的な処理に困難を有していると考えられる子どもは、読み上げ機能よりも、ハイライトや拡大の機能をより使用して授業に参加していた。このシステムを使用した子どもの学習到達度は他単元に比較して上昇している傾向がみられ、担当教員の観察から彼らの学習意欲も向上していることが推測された。 英語の読みについて、臨床相談のデータから日本語の読み困難との高い関連性が示されたが、英語版解析プログラムについては十分なデータが得られず次年度にデータ収集を行うこととした。
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