本年度は、3年間の研究のまとめとして、本研究で開発された検査の様々な場所での利用可能性を検証すると同時に、検査結果に基づく支援技術適用の有効性も検証し、また、その成果をマニュアルとしてまとめ公開する事を目的とした。 英語圏で生活する日本人の子どもの読み書き能力を検討するために、シアトル日本人補習校に通う生徒79名、また補習校に通ってない生徒9名の読み書きデータを測定した。その結果、88名中11名に読み書きの顕著な遅れが見られ(補習校生徒10%、補習校外生徒56%)、また、両グループの読み書き能力差は学年が進行するに従って拡大することが明らかになった。英語の読み書きについては時間の制約上実施出来なかった。本研究で得た標準データを活用することで海外在住の子どもの読み書き実態を明らかに出来た。 また、読み書き障害のある子どもへの支援技術の適用について検討を行った。その結果、他のテストバッテリーと組み合わせて視覚性・聴覚性タイプに分類することで、いくつかの有効であると考えられる支援技術を提示する事が出来た。それを子どもに使ってもらうことで子どもが自己調整しながら自分に合った機器を選択できることが明らかになった。さらに日本特殊教育学会やLD学会において支援技術活用についての発表やシンポジウムを開催し、技術利用を前提とした新しい特別支援教育の枠組みの方向性を提示した。 評価および支援技術適用マニュアルについては、今年度中に「読み書き困難がある小学生の評価検査(仮題)」という検査として出版予定である。今回の研究で得られた読み書き検査による診断でその支援技術機器やソフトウェアについては研究室のHPにまとめ公開している (http://at2ed.jp/pro/categoryList1.php/)。
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