研究概要 |
志村多様体のp-進的研究にはジッド幾何学が重要であることか世界的に認識されてきている.研究代表者は以前からこの視点を持ちリジッド幾何学の基礎を継続して研究してきた. 以前の科学研究費補助金(リジッド幾何学とその数論への応用,平成17年度-20年度)のおかげで基礎研究が進んだが,著者(加藤文元氏(京都大学理学研究科)との共著)としての公表に向けでさらに今年度さらに進展があった.リジッド幾何学で必要な可換環論の基礎は藤原,加藤にO.Gabber(IHES)も加わってさらに拡張され,より使いやすい条件になった.この部分は環論的に興味があると考えられるため,プレプリントにまとめた(仮題"On Hausdorff completions of commutative rings in rigid geometry",公表準備中).より具体的には,形式スキームが定義イデアルの外でネーター的(かつその上に有限生成なものも同じ性質をもつと仮定)をすると十分であり,多くの関手性をもつ非常に良いものとなる.従来想定されていたものより広い範囲での基礎付けに非常に有効な結果である.この枠組みは志村多様体や,ガロア表現の固有多様体を考察するには十分であるが,志村多様体の無限被覆多様体で条件に当てはまらないものがある(L.FargueによるDrinfeld上半空間とLubin-Tateモジュライ空間の関係). この場合はBanach環の構造に着目することが必要であるが,このように単なる抽象論として枠組みを作るのではなく,現れる例に注目して研究が進められるのもこの研究計画の特徴的な部分である.
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