研究概要 |
今年度は主として保型形式の整数論への応用について研究を行った. pを奇素数とし,固定した総実代数体上のCM二次拡大で相対類数がpで割れないもの(相対類数の非可除性)とガロア表現の変形環に関係があることを研究代表者が発見していたが,他の志村多様体に関連した代数群の場合に同様の問題を考察した(上記非可除性は二次線形群の場合に相当している). CRM(スペイン,バルセロナ)でガロア表現と保型形式についてのspecial yearが行われていた.研究代表者は6月に一ヶ月ほど招待され,研究交流を行った.特に,非可除性と変形環との関係について研究発表を行った. また相対類数の非可除性については,別のアプローチとしてCM二次拡大の数を下からboundする方法が(有理数体の場合に)Skinner-Onoにより知られていた.総実代数体に拡張する場合はHilbertモジュラー形式について様々な基礎研究を行う必要がある.今年度,高井勇輝(名古屋大学)によりSturmの定理の拡張が示され,Skinner-Onoの結果の一般化も可能になってきているので,今後高井との研究体制を強化していきたい. 前年の報告の通り,志村多様体のp-進的研究にはリジッド幾何学が重要であることが世界的に認識されてきている.研究代表者はリジッド幾何学の基礎付けも視野に入れて研究しているが,加藤文元(京都大学),O.Gabber(IHES)との共同研究として前年度にまとめたプレプリントを論文として公表した.HesselholtとGeisserは正標数でのWitt複体とモチーフについての研究を行っている.
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