研究課題/領域番号 |
21340006
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
西山 享 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70183085)
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研究分担者 |
和地 輝仁 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30337018)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 旗多様体 / 球作用 / 対称空間 / Bruhat分解 / KGB理論 / モーメント写像 / 代数群の軌道 / 冪零軌道 |
研究概要 |
複素簡約リー群 G の部分旗多様体 X = G/P を考える。本研究では K の旗多様体 Z = K/Q と X = G/P の直積である2重旗多様体 X×Z 上の K 軌道の構造を明らかにすることが目標であった。対称対の2重旗多様体 X×Z 上のK 軌道は一般に有限個とは限らないが、Bruhat 分解とKGB理論を応用して、軌道の階層を構成してその性質を調べることに成功した。これを利用して、ある条件のもとでは軌道が有限になることを示し、その場合の分類を行った。これは香港工科大学の Xuhua He 教授、および九州大学の落合啓之教授、IPMUの大島芳樹助教との共同研究である。 有限型の2重旗多様体の分類が完成したのは、以下の3つの場合である。(I) Q = S が K のボレル部分群、つまり Z = K/S が K の完全旗多様体になっている場合。(II) P=B がボレル部分群、つまり X=G/B が G の完全旗多様体になっている場合。(III) G=G'×G' が簡約群の直積で K=G' がその対角的部分群、そして Q=B' が K=G' のボレル部分群の場合。このうち、(III) は我々の設定ではないものの、すでに Stembridge によって分類が完成している。しかし(I)および(II)の分類はまったく新しい。 (I), (II) の結果を用いて (I') K の球作用を持つ部分旗多様体 G/P の分類と、(II') G の球作用を持つ対称空間上の主ファイバーバンドル G/Q の分類も完成した。とくに (I') は2重旗多様体を離れても重要な意味を持つ結果である。また (II') も、この種の球作用はまったく知られていなかったので重要な意味を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から引き続いて研究していた有限型の2重旗多様体の分類は完成した。これは本研究課題にとって大きな飛躍であったと考える。さらに、思いがけぬ副次的な成果として、2種類の異なるタイプの球等質多様体の分類を得ることができた。これは代数群の球作用に関する基本的な結果になると思う。現在その成果を論文にまとめている最中である。また、得られた結果を、複数の国際研究集会でも発表することができ、広く関係する研究者に知ってもらうこともできた。 まだ成果としてはまとまってはいないものの、2重旗多様体上の軌道の構造や、軌道の余法束のモーメント写像による像、そして冪零軌道の構造の研究も進展中であり、研究の進行は順調である。空間の分類は完成したが、まだ軌道の分類は手つかずの状態で残っており、これからも多くの研究が必要である。これに関連して Lustztig の指標層の理論や、庄司俊明・加藤周などのエキゾティックな冪零多様体との関係を探るなど、最終年度に向けての予備的な調査・研究も有意義であった。 また、2重旗多様体上の閉軌道の分類や、ある種の放物型部分群の組の存在がエルミート対称空間の特徴付けになるという成果も前年度に得られているが、当該年度には、これらの結果をまとめて論文の形にし、専門誌に投稿することができた。その論文はすでに受理され、2013年度に発表予定である。 最終年度である2013度はこれらの結果を踏まえて、有限型の2重旗多様体上の軌道の構造やモーメント写像との関係を研究するなどさらに多彩な研究が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
対称対の2重旗多様体に関係する球多様体の分類問題はひとまず完成したので、これを論文にまとめて発表する。その後、有限型の2重旗多様体上の軌道の分類や構造の研究を行う。さらに軌道の余法束のモーメント写像による像を冪零軌道ととらえ、その構造を研究したい。この研究は L.Fresse と共に推進する。 指標層の理論も、表現論的に興味深い。これについては、有限型の2重旗多様体の研究と同様、Xuhua He, 落合啓之、大島芳樹と連絡を取りながら研究を進めたい。このとき、エキゾティックな冪零多様体が、2重旗多様体上の軌道の余法束のモーメント写像の像として現れることが期待される。その意味では、この指標層の理論は2重旗多様体の研究と直結するものである。 最後に、冪零軌道の軌道グラフについての研究と表現論を通して得られる隨伴多様体の研究の融合をはかり、この研究に決着を付けたいと考えている。また例外型群の場合に計算機を用いて解析を進めたい。表現論的にも隨伴多様体の余次元1の連結性が重要であり、これを証明することに力を注ぐ。それができれば、多重旗多様体上の軌道の分類を他の空間における群軌道の問題へと応用すること、情報理論への応用について考えたい。これを最終年度に向けて完成できるよう研究を総体的に推進する。 また2013年度は研究課題の最終年度でもあるので、研究成果を生かした社会還元も行いたい。そのために表現論や旗多様体を含んだ一般の読者への啓蒙書を執筆中である。研究成果を盛り込んで、広く研究成果を知ってもらえることを期待している。
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