研究課題
重要な進展として、次の二つの成果が得られた。(1)Rodney Y.Sharp氏との共同研究によって、フロベニウス型の歪多項式環の研究を深化させた。素数を標数に持つ局所環上の有限生成加群について、その上のフロベニウス写像の左からの作用が、そのMatlis双対の右からの作用に自然に拡張される。この対応によって歪多項式環上の右加群(基礎となる素数標数局所環上有限生成加群)と左加群(基礎環上アルティン加群)との間に、双対性が成立することを証明した。さらには、この双対性理論をイデアルの密着閉包の理論に応用することで、数々の新しい事実を見出すことができた。(Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Societyに掲載。)(2)研究代表者自身による加群の退化の新しい定義に基づいて、Cohen-Macaulay加群の退化の新しい理論体系を構築することは本研究課題の重要な研究目標の一つである。今まで加群の退化は加群圏(アーベル圏)においてのみ考察されてきたが、Cohen-Macaulay加群の退化の安定圏における類似を詳しく考察を行った。その結果として、安定圏における退化は従来の退化と密接な関係にあり、実際的計算においては安定圏における退化の方が易しいこと、その結果を用いて従来の加群圏における退化の様子を知ることができることなどが分かった。(Journal of Algebra に掲載。)上記の他にも、アーベル圏の加法的な部分園についてそのピカール群を圏諭的に定義することができた。そして、それが従来の環のピカール群や因子類群の概念等を取り込んだより一般的な圏の不変量となっていることを確かめることができた。また部分圏の自己同型群をこのピカール群を使って表示する新たな公式を得た。(平松直哉との共同研究、Math Scandinavicaに掲載。)さらに、コホモロジー関手を特徴付ける圏諭的な性質について考察を行い、局所コホモロジー論の圏論的な展開を行った。またこの考察を通して、古典的な局所コホモロジー関手や上述の二つのイデアルに付随した局所コホモロジー関手を関手全体の集合の中で特徴付けることができた。(吉澤毅との共同研究、Math.Journal of Okayama Univ.に掲載。)
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society
巻: 150 ページ: 419-438
Math.Journal of Okayama University
巻: 53 ページ: 129-154
Journal of Algebra
巻: 332 ページ: 500-521
Mathematica Scandinavica
巻: vol.107 ページ: 5-29
Proceedings of the American Math.Soc.
巻: vol.138, no.7 ページ: 2265-2268
http://www.math.okayama_u.ac.jp/~yoshino/JapaneseIndex.htm