研究概要 |
統計学・確率論の文脈から現れたα-行列式に対し,2年前,それによって生成されるGL_n-巡回加群の表現論的構造(既約分解)を松本詔との研究で明らかにした.α=-1が通常の行列式であり,α=1のときがパーマネントである.そこで判ったことは,αが特別な値(Macdonaldの意味での,所謂,最高ウェイト(ヤング図形)λに対するcontent polynomialの根)のときには,λに対応する既約成分がgenericなαの場合の巡回加群の既約分解から抜け落ちてしまうという事実である.このような値を退化値と呼ぶことにすると,それらはα=±1/k(k=1,2,...,n-1)で尽くされる.このような退化値のうちα=-1/kの場合にwreath行列式なる概念を導入し,それが対称群のwreath積の相対不変式を定めることを利用し,GL_nの不変式論及び球関数論の研究を行った. 今年度は,そのwreath行列式を用いて,有限群Gとその部分群Hに対して,いわゆる群行列式の拡張である,wreath型群行列式の研究を開始した. 現在は,Gが巡回群の場合にしか,明示的な計算は出来ていないが,一般の群Gに対しても,G,Hの位数と指数からきまる,|G|一次対称群とその部分群として定義される対称群のwreath積の球関数が現れることを発見した.
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