研究課題/領域番号 |
21340011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
若山 正人 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40201149)
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キーワード | 非可換調和振動子 / ゼータ関数 / 表現論 / α行列式 / 不変式論 / 保型形式 |
研究概要 |
非可換調和振動子Qのスペクトルゼータ関数ζ_Q(s)の特殊値から自然に発生する数論的研究を琉球大理の木本一史とともに行った。s=2での特殊値の場合には、それがきわめて明示的な形で、保型形式・楕円曲線のモジュライに繋がることが、これまでの研究から判明していた。しかしながら、s=4以上の偶数の場合や、3以上の奇数点の場合には、その数論的構造は大いに期待されるものの、全く不明であった。(偶数・奇数点によって異なる構造となっていることは分っていた。)今年度の研究で、s=2の場合程、簡単に詞述できる構造ではないものの、特殊値に付随する母関数が満たす微分方程式の解空間には、モジュラー群の合同部分群により統制される線形空間構造が存在している様子が、保型形式論で使われる手法を援用することで、うかがえるようになった。 α行列式から、その加群構造の特異値を観察することで定義されるリース行列式は、一般線形群の相対不変式であることが、これまでの研究で分っている。リース行列式を用いて、有限群とその部分群に対して定まる群行列式の一般化に関し、変数の特殊化(principal specialization)を行い、実験的研究を進めた。 ゼータ正規化積を用いて、モジュラー群に関する保型形式の具体的構成を行った。これに関する論文を準備中であるが、未完成である。なお、概要については、京都大学数理解析研究所講究録「解析数論-複素関数の値の分布と性質を通して」(2012年発行)に掲載される予定である。 また、ζ_Q(s)のs=4での値の数論的記述に成功した。そこでは、residual modular formsという新しい概念を定式化し、それに付随するコホモロジー群の研究も始めることができた。さらに、residual modular formsの重要例となる微分アイゼンシュタイン級数を導入したほか、関係するゼータ正規化積の一般化の研究を愛媛大学理学部の山崎義徳と行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非可換調和振動子のスペクトルに関するゼータ関数の特殊値について、新しい数論的構造の発見をみた。さらに、その記述のために、residual modular formsとそれに付随する新しいコホモロジーを定式化した。
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今後の研究の推進方策 |
11で述べた数論的研究を推し進めるために、琉球大学理学部の木本一史との共同研究を進める。また、α-行列式の表現論、特殊関数論的研究を推進し、さらに統計学へのフィードバックをはかる。
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