非可換調和振動子Qのスペクトルゼータ関数ζ_Q(s)の特殊値から自然に発生する数論的研究を琉球大理の木本一史とともに行った。s=2での特殊値の場合には、それがきわめて明示的な形で、保型形式・楕円曲線のモジュライに繋がることが、これまでの研究から判明していた。しかしながら、s=4 以上の偶数の場合や、3以上の奇数点の場合には、その数論的構造は大いに期待されるものの、全く不明であった。(偶数・奇数点によって異なる構造となっていることは分っていた。)今年度の研究で、s=2 の場合程、簡単に記述できる構造ではないものの、特殊値に付随する母関数が満たす微分方程式の解空間には、モジュラー群の合同部分群により統制される線形空間構造が存在している様子が、保型形式論で使われる手法を援用することで、うかがえるようになった。事実、本年度の研究において、新たにEichler積分の拡張であるResidual modular formsを定式化し、同時に周期的Eichlerコホモロジー群を定義し、その研究を行い、ζ_a(4)を完全に記述することに成功した。また、上記とは異なる母関数の保型性を発見した。α行列式から、その加群構造の特異値を観察することで定義されるリース行列式は、一般線形群の相対不変式であることが、これまでの研究で分っている。リース行列式を用いて、有限群とその部分群に対して定まる群行列式の一般化に関し、アーベル群の場合に変数の特殊化(principal specialization)を行い、木本らと一般的定理を得た。
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