研究課題/領域番号 |
21340013
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 孝男 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00182444)
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研究分担者 |
塩谷 隆 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90235507)
磯崎 洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90111913)
永野 幸一 筑波大学, 数理物質系, 講師 (30333777)
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キーワード | 崩壊 / スペクトル逆問題 / アレクサンドロフ空間 / リッチ流 |
研究概要 |
平成22年度に引き続き、断面曲率の絶対値と直径が一様に有界なn次元リーマン多様体と正規化されたリーマン測度の対の成すモジュライ空間の、測度つきグロモフ-ハウスドルフ位相に関するコンパクト化集合において、スペクトル逆問題を考察した(ヤロスラフ、クリコフ、マチ・ラサス両氏との共同研究)。平成23年4月と同年11月の筑波大学、同年8月のケンブリッジのニュートン研究所における両氏との共同研究を通して、このモジュライ空間におけるスペクトル逆問題の一意性および定性性の議論を論文にまとめる作業がほぼ一段落しつつある。本研究については、同年12月のヘルシンキ大学で開催された「Finish-Japanese-Korea Workshop 2011」や、平成24年1月の京都大学数理解析研究所で開催された「偏微分方程式の逆問題解析とその周辺分野に関する研究」において研究成果発表した。三石史人氏(筑波大非常勤研究員)との共同研究により、3次元アレクサンドロフ空間の崩壊理論の第一段階、すなわち、空間が境界を持たない場合に、崩壊の構造を完全に決定し、論文にまとめることができた(85ページ)。リーマン多様体の崩壊とは本質的に異なる幾つかの崩壊現象が起こることが判明した。アレクサンドロフ空間のモジュライ空間はコンパクトであるので、このより大きな枠組みの中でリーマン多様体の場合の塩谷-山口の崩壊を拡張できた意味は大きい。来年度の課題は境界つき3次元アレクサンドロフ空間の崩壊理論まで展開することであろう。また横田巧氏(京都大学数理解析研究所)との共同研究により、3次元閉多様体上のリッチ流の特異点構造の局所版の解明も進行中である。極限の一意性など当初気づいていなかった困難さも判明している。来年度の研究において論文にまとめ、さらにある種のリッチ流の不変量の収束まで展開させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元閉リーマン多様体のリッチ流の特異時間における特異点解明はほぼ順調に進展している。 アレクサンドロフ空間の特異点集合の解明にはまだ及ばないが、3次元アレクサンドロフ空間の崩壊理論研究を通して、比較的低次元の空間の場合の構造が見えやすくなった。また一般次元の非負曲率の非コンパクトアレクサンドロフ空間の研究にも進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
3次元閉リーマン多様体のリッチ流の特異時間における特異点解明に対して、極限空間の一意性に取り組む必要がある。リッチ流の下での距離の変化を曲率が非常に大きい部分で考察しなければならない点が困難な点であるが、ペレルマン氏の標準近傍定理の証明を見直す必要があるだろう。境界つきリーマン多様体のモジュライ空間におけるスペクトル逆問題に挑戦する初めの一歩として、境界が凸であるリーマン多様体を考察することも視野に入れて、突破口を開きたい。
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