研究概要 |
本研究は,閉曲面上に埋め込まれたグラフの観察や操作を可能にするコンピュータ上のデータベースシステムを開発し,それを活用することで,グラフの再埋蔵理論と関連させて定式化することのできる位相幾何学的グラフ理論におけるいくつかの未解決問題の解決を図ることを目的としている.本年度は,抽象グラフとその自己同型群との関係で組合せ的に定義されている識別染色数に対して,位相幾何学的グラフ理論における閉曲面上のグラフの再埋蔵の理論を応用することで,いくつかの定理を証明した。特に,一般の閉曲面上の三角形分割の識別染色数に対して,三角形分割の再埋蔵を制御するパネル構造の理論に基づいて,閉曲面の種数に関して線形な上界があることを証明した。また,識別染色数と通常の染色数との差を考えることで,3-連結平面的グラフの分類を行った。その一方で,グラフ理論の問題を解くためにユーザが定義したプログラムの実行・停止・継続および出力の表示を管理するシステムを開発した。現段階では,位相幾何学的グラフ理論の問題とはリンクしていないが,そのシステムを使って,頂点数の少ないグラフを分類し列挙することは容易にできた.
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今後の研究の推進方策 |
作成したグラフ理論支援システムを活用して,コンピュータ実験による問題解決も視野に入れて研究を続けるが,すでに理論的に証明できた研究成果もあるので,その理論的な発展により大きな力を注ぐ.また,識別染色数だけなく,未解決のままの平面被覆予想(グラフの射影平面への埋蔵と平面的被覆の存在をリンクした予想)にも目を向け,単に予想の解決を目指すだけでなく,それと関連して明らかとなる現象を探求し,多くの成果を生み出すことを目指す.
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