研究概要 |
非コンパクト多様体上のラプラス・ベルトラミ作用素の連続スペクトルの構造を研究した.多様体としてはコンパクトな多様体にユークリッド計量に漸近する計量をもった複数のendがついたものを考え,極限吸収原理,固有函数展開等を示した.これらに基づいて多様体上の波動方程式に対する散乱行列を構成し,散乱行列から元の多様体のリーマン計量を定める逆問題を解いた.この問題は現実の場合にはwave guideに関する逆散乱問題である.これはLondon大学のY.Kurylev,Helsinki大学のM.Lassasとの共同研究である. また表面の局所的な電流・電圧の観測データから物体中の電気伝導度の不連続点の位置を推定する問題の数値計算の研究を継続し,3次元の場合に満足すべき結果をえた.これはElectrical Impedance Tomographyにおける基本的な問題であり,医学・工学・地層探査等に応用があることが期待される.これはHelsinki大学のS.Siltanen,立命館大学のS.Nakata,アイシンAWのT.Ideとの共同研究である. 量子力学におけるアハローノフ・ボーム効果を記述する2次元の磁場を持ったシュレーディンガー作用素に対する逆問題を研究し,凸物体の外部領域においてはS行列のゲージ不変性とハミルトニアンのゲージ不変性が同値であることを証明した.これはCalifornia大学のG.Eskinとの共同研究である. これらの結果はすべて査読つきの専門誌に発表された.
|