研究課題/領域番号 |
21340028
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
磯崎 洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90111913)
|
キーワード | 非コンパクト多様体 / リーマン計量 / ラプラス-ベルトラミ作用素 / 波動方程式 / S行列 / 逆問題 / 境界制御法 |
研究概要 |
(1)非コンパクトリーマン多様体上で波動方程式の逆散乱問題を研究している。コンパクト部分には任意のトポロジー、計量を許し、非コンパクトな有限個のendでは計量が標準的なものに漸近する場合を考える。多様体上でのヘルムホルツ方程式の解空間を多様体上のフーリエ変換にについたポアッソン積分によって表示する。ヘルムホルツ方程式の解の無限遠における漸近挙動からS行列を定義する。このS行列から多様体のリーマン計量を決定する逆問題の解決を目標とする。これまでの研究によりendが柱状領域で計量がユークリッド計量に漸近する場合を前年度に完成させた。これは現実問題ではwave guideに対する逆問題を解決したことになる。今年度は2次元においてendの計量が双曲計量に漸近する場合を完成させた。有限部分では計量に錘状の特異点を許すことができ、そのため、数論に現れるgeometrically finiteな2次元双曲空間すべてを扱うことができる。結果は現在投稿中である。 (2)熱方程式において係数の不連続性を境界における熱流の計測から決定する逆問題を解決した。境界の一部分での計測値から不連続面の位置と熱伝導係数を決定することができる。空間次元は1次元から7次元までで実用上重要な場合に適用可能である。さらに1次元の場合には数値計算も行い、結果はnoiseに対してrobustであることが分かった。これらの結果は学術雑誌に掲載されることが決定している。さらに不連続性が時間に依存する場合にも外部境界と不連続面が凸性の条件を満たす時に同様の理論を完成させた。結論はすべて次元において通用するものである。現在、論文にまとめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非コンパクト多様体上の逆問題に関しては錘状の特異点の扱い方が初期に予想した以上に困難な問題であることが判明したが、2次元の場合に完全な解決ができた。これは古典的な数論的曲面をすべて含むものであり、満足すべき結果である。不連続係数を持つ熱方程式の逆問題においても理論的部分で解決をみた。これは全く新しいものである。
|
今後の研究の推進方策 |
非コンパクト多様体上の逆問題に関しては3次元以上の場合に錘状特異点の扱いが重要な問題である。現在、応用上重要な3次元曲面の場合の実例を観察しながら一般論を構築している。 不連続係数を持つ熱方程式の逆問題においては、係数が時間に依存する場合の理論をさらに進展させることと数値計算を行うことが課題である。
|