研究課題/領域番号 |
21340029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹井 義次 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (00212019)
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キーワード | 完全WKB解析 / 超幾何系 / パンルベ方程式 / ストークス曲面 / 新しいストークス曲線 / 動かない特異点 / ボレル総和可能性 |
研究概要 |
本年度はまず、大学院生の廣瀬三平君や岩木耕平君と協力して、(1,4)型の2変数超幾何系のストークス曲面の構造や、パンルベ方程式の1パラメータ解が持つ「動かない特異点」の構造を調べた。 (1,4)型の2変数超幾何系については、そのストークス曲面が、第2変数を固定して得られる3階常微分方程式のいわゆる新しいストークス曲線全体を生成することが廣瀬君の数値計算により確かめられた。この結果は、高階常微分方程式の新しいストークス曲線が、多変数化した系のストークス曲面として全て捉えられることを示すと同時に、その中で有効なもののみを取り出すにはストークス曲面全体は大き過ぎることも意味する。次の課題としては、有効な新しいストークス曲線と「変わり点の交差」という現象との関連性を調べることが重要となるであろうo一方、パンルベ方程式の1パラメータ解のボレル変換が持つ「動かない特異点」とそれに付随して起こる(パラメータの変化に伴う)ストークス現象については、第3パンルベ方程式に対しても第2パンルベ方程式の場合とほぼ同様な結果が成立することが岩木君により示された。パンルベ方程式の場合も「動かない特異点」の構造は方程式によらず普遍的であり、線型方程式のときと同様に標準形への変換論が成立する可能性を示唆する興味深い結果である。 さらに、連携研究者の小池氏と共同で2階非斉次線型方程式の完全WKB解析に取り組み、その形式解のボレル総和可能性を保証する(斉次方程式のストークス曲線で記述される)自然な幾何学的条件を得ることに成功した。この分野における懸案の問題の一つである高階線型方程式のWKB解のボレル総和可能性の証明にも繋がり得る、重要な結果であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若い大学院生達の協力を得て、具体的な超幾何系やパンルベ方程式の解析は概ね順調に進行し、当初の「期待」は「確信」に変わりつつある。従って、これまでに目標の5~6割程度は達成できたと考えている。他方、標準形への変換論の構築をはじめ、いよいよこれから一般論の展開に取り組むべき時期であり、その意味ではこれからが正念場であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた具体的な方程式に対する知見を踏まえ、今後は一般論の展開を中心にして研究を進めて行く。特に、超幾何系に関する「変わり点の交差」現象についてはPearcey系への変換論、またパンルベ方程式の形式解の「動かない特異点」の問題については第2パンルベ方程式への変換論が、それぞれ構築可能かどうかを検証する。同時に、こうした中心的課題に対する研究をより推進させるためにも、関連する諸問題(高階パンルベ方程式の第2種変わり点における標準形の問題、パンルベ方程式のインスタントン解の解析的意味付け、高階線型方程式のWKB解のボレル総和可能性、等)についても適宜取り組んで行きたい。
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