主に確率解析の立場から、拡散過程の研究を行った。大きく、非対称拡散過程に対する超縮小性とその応用研究、対称マルコフ過程の双対超縮小性の研究の二つを行った。 1番目の課題については、対称な場合については従来から深い研究がおこなわれていたが、それを非対称な場合に拡張を行った。超縮小性のための十分条件に関しては、対称な場合とほぼ同じ議論で話が進むが、必要性に関しては付加的な条件が必要となる。また、時間 t が小さい場合だけの局所的な評価の場合は、扇形条件を満たす非対称 Dirichlet 形式の枠組みで、必要十分条件まで出すことが出来る。また、これらの結果をコンパクトリーマン多様体の上の非対称な拡散過程に適用すると、基本解の一様な収束を示すことが出来る。L2 での収束は Hwang-Ma-Sheu によって得られていたが、それを一様収束性にまで拡張したことになる。 2番目の課題については、超縮小性の双対概念である双対縮小性を定義し、それが成立するための必要十分条件を求めた。ここでは対称 Dirichlet 形式に対応するマルコフ過程を考察した。双対超縮小性とは、超縮小性が L1 から L∞への半群の有界性を意味するが、双対超縮小性は L∞ から L1 への半群の有界性を意味するものである。超縮小性に関しては、同値な条件として Nash の不等式や、Sobolev 不等式などがあるが、同じタイプの不等式が、双対的な指数に替えて成立することが必要十分であることが示せる。このことにより、Sobolev の不等式のすべての指数に対して、対応する概念が存在することが分かる。さらに1次元の拡散過程について適用し、標準測度の境界での漸近的な挙動により、対応する条件を与えることが出来ることを示した。
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