研究課題
有限体上の離散可積分方程式を研究した.非線形発展方程式を有限体上で研究する際に,これまで大きな障害となってきたのは,従属変数の逆数を取る操作が入るため,一般に0で割ることにより時間発展が定義できないことであった.これに対して,離散パンルベ方程式では,坂井理論に基づいて有限体上で射影空間をblow-upした初期値空間の構成を行い,方程式を射影空間の自己同型写像として定義することによって解決できた.また,ソリトン方程式では,有限体そのものではなく有限体上の有理関数を扱うことで,時間発展の不定性を解消することができた.この手法と,離散方程式の可積分性の判定テストである特異値閉じ込めテストとの関係についても明らかにした.また,Yang-Baxter 写像に付随する一般化されたKdV方程式を扱い,有限体上でのソリトン解の具体形とその周期を求めた.ついで,それらを局所体(p進数体)上で考察し,almost good reduction(AGR) と名づけた良い性質を持つことを見た.これは標数0の体上で考えられてきた特異値閉じ込めの,数論的な類似物であり,この性質を応用して有限体上の特殊解を具体的に構成した.さらに,この結果を代表的なソリトン方程式である離散KdV方程式に適用し,有限体上で矛盾なく定義できること,および,ソリトン解を構成可能であることを示した.また,初期値を変数と見たとき,解は初期値の有理関数となるが,その関数はサイトごとに coprimenessと呼ぶ性質が存在することを証明し,この性質が特異値閉じ込めの数学的に明確な定義を与えることを示唆した.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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