研究課題
量子力学が研究対象とするミクロな世界では、古典力学的な観点から説明できない注目すべき現象がしばしば生じる。このような現象は量子効果とよばれ、ひとつひとつが数学解析に格好の題材を提供している。本研究は、スペクトル理論において培われた漸近的手法を駆使し、量子力学に現れる量子効果の数理現象を追究する目的で行われた研究である。 本年度の研究成果について報告する。代表者は、昨年度に続き、2次元磁場散乱のレゾナンスにみるアハラノフ・ボーム効果 (AB効果) の数理を追究した。散乱系として、磁場を完全に遮蔽する2個の障害物からなる系を対象とし、障害物の間で生じる捕捉現象からスペクトルが位置する実軸の近くに生まれるレゾナンス問題を解析した。ゲージ変換(2つの障害物を互いに分離させる手法として)と complex scaling 法(個々の障害物の外部領域で構成されたグリーン関数を反復する手法として)を駆使し、捕捉現象から生まれる難しさを克服し、レゾナンスの存在とその分布への AB 効果の関与を示した。得られた結果の一端は、Euler 研究所(St.Petersburg)でのSpectral Conference と RIMS 研究集会にて口頭発表を行った。現在、論文として執筆中である。 その他の主な研究活動として、分担者が主催する次の研究集会の開催経費の一部として研究経費が使われた:夏の作用素論研究集会(岩塚 主催(9月新潟))・準古典漸近解析セミナー(藤家 主催(10月立命館大学))・姫路偏微分方程式研究集会(藤家 他 主催(2月姫路))
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Kyoto Math. J.
巻: 52 ページ: 557-595
DOI:10.1215/21562261-1625199
Lett. Math. Phys.
巻: 101 ページ: 323-339
DOI:10.1007/s11005-012-0573-6