研究概要 |
Rigidityや延長可能性の視点から,複素領域における微分方程式の大域解析の手法を開拓していくことを研究目的としていた.本年度は,「Workshop on Accessory Parameters」(2009年6月18日~22日,東京大学玉原国際セミナーハウス),「アクセサリー・パラメーター研究会」(2010年3月15日~17日,熊本大学理学部)の2回の研究集会を開催し,また少人数の研究打合せも頻繁に行うことで研究を進めた. 本年度得られた研究成果は以下の通りである. 1. 延長可能性の概念を整備し,本質的でない延長を定式化した.また齋藤自由因子に特異性を持つ完全積分可能系を構成し,そのモナドロミーを決定し,大域構造の解析を進めた. 2. 不確定特異点を持つ微分方程式に対して,Deligne-Simpson問題に取り組み,middle convolutionの定式化も進めた. 3. 超平面配置に対数的特異性を持つ完全積分可能系に対するmiddle convolutionを定義し,その基本的性質を示した. 4. 与えられたスペクトル型を持つFuchs型方程式が存在するための必要十分条件を求めて,そのuniversal modelを構成した.さらにその方程式の解のべき級数表示・接続係数・積分表示・既約性に関する一般的結果を得た.Rigidな場合にはその具体的公式を与えた. 5. 指数にresonanceを持つようなオイラー型積分表示において,特異点における漸近挙動を実現するサイクルが,正則化可能サイクルから得られることを見出した. 6. Rigidな方程式の解の積分表示に関して,ホモロジーの交点理論の研究を進めた. RigidなFuchs型常微分方程式の解析を精密化するとともに,それを足がかりにして,不確定特異性を持つ場合,多変数の完全積分可能系の揚合,rigidではないがそれに近い良い性質を持つ場合などの大域解析を実現しつつあって,古典的で基盤的な分野における大きな本質的な進展をもたらす題材を揃えることができた.
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