研究課題/領域番号 |
21340038
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
原岡 喜重 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30208665)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大域解析 / 複素領域における微分方程式 / モノドロミー / 完全積分可能系 / アクセサリー・パラメーター / 超曲面 |
研究概要 |
Rigidityや延長可能性の視点から、複素領域における微分方程式の大域解析の手法を開拓していくことを研究目的としていた。本年度は、「アクセサリー・パラメーター研究会」を2012年9月9日~12日(東京大学玉原国際セミナーハウス)、および2013年3月15日~17日(熊本大学理学部)の2回開催し、熊本大学において「数論幾何的微分方程式セミナー」を行い、さらに国内における研究打合せや議論を頻繁に行うことで研究を進めた。 本年度に得られた成果は以下の通りである。 1.完全積分可能系のrigidityを,超曲面の補空間上の局所系のrigidityとしてとらえる構想の下に,Appell超幾何F1,F2,F3などについてrigidityを示し,局所モノドロミーのスペクトル型や空間のコンパクト化との関連などについて考察を行った。 2.積分表示を用いた微分方程式の大域解析を,指定された局所挙動を与えるサイクルの構成方法を理論的に整理することで,系統的に進めた。 3.完全積分可能系に対するmiddle convolutionの定義を,特異点集合が超曲面の場合にまで拡張する道筋を与えた。 上記研究集会・セミナーを始め多くの研究打合せを重ね,本研究の構想・発想の浸透を図ることができ,数論・代数幾何学・表現論・位相幾何学など異なる分野にも新しい視点を提供できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fuchs型常微分方程式に対して定義されていたrigidityの考えを,不確定特異点型常微分方程式や確定特異点型完全積分可能系に適用し,理論整備および本質的な例の構成を進めることができた。 延長可能性を考えるには,延長後の多変数完全積分可能系全体のなす空間の構造を解明する必要があるが,Katz理論をモデルにその考察を進めている段階である。すでに完全積分可能系に対してもmiddle convolutionが定義されることを示し,非自明な例の蓄積も進んでいる。また変形方程式を用いて完全積分可能系を構成する道筋も与えている。一般論の完成は遠い目標であろうが,本質的な問題がどこにあるかは,これまでの考察でだいぶ明らかになってきていると考える。 研究集会・セミナー・研究打合せなどを積極的に行って,解析学のみならず代数学や幾何学の研究者とも交流を持ち,延長可能性やKatz理論を用いた解析の有用性を浸透させることができつつある。直接あるいは間接的に本研究から着想を得た研究もいくつか進められている。 以上のことから,達成度としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
多変数完全積分可能系の特異点集合の幾何学が,解の解析的性質をどのように規定するかということを解明していきたい。その際基本となるのはrigidityである。特異点集合を与える超曲面に対し,rigidity指数に相当する量を定義できるか,というのが基本的で重要な問題と考えられる。例を積み上げ,この問題に取り組んで行きたい。 多変数完全積分可能系を具体的に構成する手順を与えることも重要な問題である。変形方程式の特殊解を用いた構成方法を確立していきたい。 以上を中心的な課題として取り組むと同時に,多くの関連する分野と交流を進め,新しいテーマの開拓も進めていく。全国規模で行う研究集会「アクセサリー・パラメーター研究会」や,熊本大学における大域解析セミナーなどを開催し,様々な分野の研究者との交流,若手研究者の育成に努める。また国内外の研究集会やセミナーに参加し,研究成果を伝えつつ,新たな展開を求めて議論を行っていきたい。
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