研究課題/領域番号 |
21340039
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
砂田 利一 明治大学, 理工学部, 教授 (20022741)
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研究分担者 |
楯 辰哉 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (00317299)
樋口 雄介 昭和大学, 教養部, 講師 (20286842)
阿原 一志 明治大学, 理工学部, 准教授 (80247147)
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キーワード | 位相的結晶 / 標準的実現 / 離散的代数幾何学 / 離散幾何解析学 / アーベル・ヤコビ写像 |
研究概要 |
現代結晶学は、結晶の中の原子と結合を図式化した空間内のネットワークのブラベー格子作用による商グラフが有限グラフとなるという「観察」から出発している。数学的には、これは結晶ネットワークが有限グラフ上の無限アーベル被覆グラフになっていることを意味し、このことから結晶の位相型(位相的結晶)は有限グラフの1次のホモロジー群の言葉を用いて完全に記述されることになる。しかし、位相的結晶は論理上の産物であり、これを標準的に空間に実現する方法(標準的実現)は、まったく異なる動機から出発した研究(ランダム・ウォークの漸近的性質の研究)において、既に2000年に小谷・砂田により提案されていた。一方、結晶学の方でも、2003年以降独立に実現方法が提案されており、我々の方法との関係が問題となっていた。今回の研究では、この問題を探求することにより、実は2つの実現が一致することを明らかにした。さらに、標準的実現の構成は、現在進展中の「離散的代数幾何学」と深く関係することを見出した。すなわち、グラフ理論の範疇で、ヤコビアンとピカール群、アーベル・ヤコビ写像の類似が定式化され、古典的アーベルの定理の類似が成り立つことを証明したが、このアーベル・ヤコビ写像が標準的実現と密接に関係するのである。この研究の成果は「熱帯幾何学(tropical geometry)」という新分野に大きな影響を与えている。そもそも、位相的結晶の標準的実現は、数体のアーベル拡大に関するクロネッカーの「青春の夢」の類似と考えられ、この意味で、当該研究では、数論、代数幾何学、グラフ理論、熱帯幾何学、離散幾何解析学、結晶学、ランダム・ウォークの理論がアイディアの点で「交差」しあうのである。
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