研究課題
彗星は、原始太陽系円盤内で塵(ダスト)が付着成長することによって形成された微惑星の生き残りであると考えられている。観測技術の飛躍的な進歩により、近年、世界各国で詳細な赤外線スペクトル観測によって、彗星から放出されたダストの熱放射が捉えられてきた。これら赤外線スペクトルデータを意義あるものにするためには、データに正しい解釈を与えなければならない。これにより赤外線スペクトルデータは彗星及び微惑星の形成・進化を理解する上で重要な役割を果たすことができる。本研究の具体的な目的は、彗星ダストの変成に着目し、サブミクロン粒子凝集体ダストモデルを用い赤外線スペクトルと彗星の進化との関係を明確化することである。本研究課題は4つのプロジェクト((1)光散乱のモデル化、(2)力学進化のモデル化、(3)衝突現象のモデル化、(4)熱放射のモデル化)として遂行ざれる。本研究課題を遂行するにあたり、まず、プロジェクト(1)で決定したサブミクロン粒子凝集体ダストの先散乱特性(光散乱行列・断面積など)データをインターネット上に公開し、データの有効活用を図る研究者組織を結成した。この組織活動を通して、世界中のさまざまな研究者が計算した凝集体ダストの光散乱特性データをコンパイルしたウェブサイト(https://www.cps-jp.org/~lisa/)を立ち上げた。これにより、本研究課題で得られたデータだけでなく、ざらに多くの凝集体ダストの光散乱特性データを用い本研究を推進することができるようになる。平成22年度の研究では、これらのデータを用いサブミクロン粒子凝集体ダストの力学特性を決定することを目標とした(プロジェクト(2))。そこで、サブミクロン粒子凝集体ダストの輻射断面積から太陽輻射圧/重力比を計算し力学特性を決定した。それを用い、NASAのディープインパクトミッションで得られたデータを解析することで、テンペル1彗星表層のダストマントルは、比較的コンパクトな構造をもつサブミクロン粒子凝集体ダストからなっていることが分かった。これによって、彗星が太陽周回にともない比較的コンパクトなサブミクロン粒子凝集体ダストが表層に残るという彗星の進化が示唆された。
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https://www.cps-jp.org/~lisa/