研究課題/領域番号 |
21340040
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木村 宏 神戸大学, 理学研究科, 特命准教授 (10400011)
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キーワード | モデル化 / 理論天文学 / 惑星起源・進化 / 彗星 / ダスト |
研究概要 |
彗星は、原始太陽系月盤内で塵(ダスト)が付着成長することによって形成された微惑星の生き残りであると考えられている。観測技術の飛躍的な進歩により、近年、世界各国で詳細な赤外線スペクトル観測によって、慧星から放出されたダストの熱放射が捉えられてきた。これら赤外線スペクトルデータを意義あるものにするためには、データに正しい解釈を与えなければならない。これにより赤外線スペクトルデータは彗星及び徴惑星の形成・進化を理解する上で重要な役割を果たすことができる。 本研究の具体的な目的は、彗星ダストの変成に着目し、サブミクロン粒子凝集体ダストモデルを用い赤外線スペクトルと彗星の進化との関係を明確化することである。本研究課題は4つのプロジェクト((1)光散乱のモデル化、(2)力学進化のモデル化、(3)衝突現象のモデル化、(4)熱放射のモデル化)として遂行される。 平成23年度の研究では、サブミクロン粒子凝集体塵の衝突現象をモデル化し、彗星ダストマントルの進化を理解することを目標とした(プロジェクト(3))。特に、プロジェクト(4)に必要な塵の物理パラメータ(サイズ・圧縮空隙率)を決定するために、平成22年度のプロジェクト(2)の結果を用いて彗星から放出された後に再集積する塵の衝突・合体計算を行った。さらに、衝突計算結果のデータから、塵の物理パラメータ(衝突速度・初期空隙率)の影響を調べ、サブミクロン粒子凝集体塵の衝突後のフラクタル次元と塵の衝突速度・初期空隙率を関係づける試みを行なった。その結果、現実的でないほど空隙率の低いサブミクロン粒子凝集体塵を除いては、実験室での模擬実験から示唆された跳ね返りは起こらない事を示した。こうしたサブミクロン粒子凝集体塵が彗星核表面で形成する「ダストマントル」と呼ばれる層に降り積るサイズおよびフラクタル次元に制約を加える事ができたことは、ダストマントルの形成および進化を理解する上で大きな成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若手の連携研究者や海外共同研究者との連携が計画どおりスムーズに進んでいることが順調に進展している理由である。
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今後の研究の推進方策 |
国内・国外の関連する研究者に始原的天体・塵の物室進化を議論する場を提供し知識の集約を図る目的で企画した国際会議における関連セッションでは、その国際会議自体の制約が研究を遂行する上での障壁となりえる。その対応策として、国際会議における関連セッションの企画ではなく、始原的天体・塵の物質進化を議論する場の提供に特化した国際会議を企画し知識の集約を図ることで、本研究課題の今後のさらなる推進を見込む予定である。
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