現在検討が進められている次期の大型望遠鏡は、TMT (Thirty Meter Telescope)のように、単一鏡ではなくモザイク鏡(多くの6角形の鏡を密に配置して有効口径を30m程度以上とするもの)となる。大型望遠鏡による主要な観測の一つに、太陽系外惑星の直接撮像・分光がある。本研究では、太陽系外惑星をモザイク大型望遠鏡で直接観測するための装置を開発することを目的とした。恒星の極近傍の惑星までも観測できるように、掩蔽型ではなくナル干渉型(恒星からの光を打ち消しあう干渉状態にして消光し、暗い惑星を観測できるようにする)のステラコロナグラフを採用する。 ナル干渉型ステラコロナグラフをモザイク望遠鏡に用いる場合には、モザイク鏡間のギャップが大きな問題となる。このために、モザイク望遠鏡に特化したナル干渉型ステラコロナグラフとして、ラテラルシアリング(波面横ずらし)干渉装置に着目した。本研究においては、大きさの異なるフレネルロム対によるナル干渉シアリング法を新たに提案し、実験を行った。最終年度となった本年度の研究においては、昨年度から行ってきたデュアルフレネルロム対を用いるシアリング・ナル干渉計の実験データの検証を行うとともに、研究の成果を論文として発表した。 点光源と見なせない恒星の消光比を上げるには、単一方向のラテラルシアリングでは不十分で、異なる2方向でのラテラルシアリングが必須となる。この2方向ラテラルシアリング法を検証するために、基本的に共通光路干渉法であり擾乱に強いという長所を有している、2枚のサバール板を用いる直交ラテラルシアリング・ナル干渉の実験も行った。このサバール板を用いる干渉法は、偏光干渉の原理に基づくため、白色光でのナル干渉を容易に達成できる。サバール板を用いる2方向ラテラルシアリング・ナル干渉の実験で、深いナル干渉を検証できた。 モザイク大型望遠鏡が完成するときに、本研究での成果が役立つことを期待したい。
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