研究課題
21年度に引き続き、ブラックホールX線新星を捉えるべく、MAXIによる突発天体発見システムの改良等を学生とともに行なった。そのシステムによって、2010年9月25日にはMAXI J1659-152を発見し、世界に速報した(Negoro et al.ATe1 2873)。MAXIの速報の後、世界の多くの天文台や衛星による多波長観測が行なわれ、同天体がブラックホールである可能性が極めて高いことやこれまででもっとも短い連星の軌道周期(2.4-2.5時間)を持つことなどが分かった。増光後に、SuzakuのTo0観測も行われ、降着円盤のロー/ハード状態からハイ/ソフト状態への遷移の途中段階と考えられている中間状態(Intermediate State)中のワイドバンドでの貴重なデータ得られ、現在、MAXIの観測結果とまとめた論文を準備中である。また、2010年7月にはブラックホール候補天体、白鳥座X-1のソフトステートへの遷移も世界に先駆けて速報し(Negoro et al.ATe1 2711)、その直後に多くの追観測が行なわれた。MAXI J1659-152と白鳥座X-1の観測データから、前述の中間状態がある程度安定した状態であることが示唆されており、その結果を12月に行なわれた第4回MAXI国際会議で発表した。この遷移の問題は、昨年度に発見されたXTE J1752-223のこれまでに例を見ない2段階のハード状態を経たソフト状態への遷移にも関係し、これまで考えられていた以上に複雑な状態遷移の機構が解明されつつある。突発天体発見システムにより、中性子星と考えられるMAXI J0556-332も発見され、既知のブラックホールや中性子星の再活動(アウトバースト)や原始星等からのフレアなども検出され、多くの天文分野の研究に役立っている。
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