超高エネルギーガンマ線天文台の将来計画として、移設式(電池制御式)解像型大気チェレンコフ望遠鏡アレイ(モバイルテレスコープアレイ)計画を提案し、その実現に向けてR&Dを開始した。主要な開発項目を以下の3つに定め、これらのR&Dを並行して行った。1)電子回路システムの低消費電力化:当初開発を予定していたフラッシュADC再利用回路と同等の性能を有し、より消費電力の小さいアナログメモリーセル(AMC)ASIC回路に開発目標を変更した。回路設計、シミュレーションを経てASICを試作し、取得した試験データから性能を評価した。その結果、大気チェレンコフ光信号を精度良く捉えるために必要な各種仕様値から、悪いものでも数倍劣る程度の性能であることを確認し、量産に向けて目処が立った。また、AMCを効率良く利用するために、各信号の伝送線に光遅延回路を導入する予定であるが、その前段、後段に設置する電気/光、光/電気変換器を試作し、十分な性能を持つことを確認した。2)大容量電池の調査と開発:大容量電池システムの選択肢の調査を行いつつ、太陽光発電パネルと鉛蓄電池を用いたシステムからR&Dを開始した。3)望遠鏡姿勢較正の自動化:GPSの干渉測位方式を利用したGPSコンパスによる望遠鏡の方向測定器を製作し、これを用いた長時間(24時間)連続測定試験を日本で行った後、オーストラリア・ウーメラのカンガルー望遠鏡に取り付けて性能を調べた。その結果、条件の良い測定環境では、約100分の連続測定で解像型大気チェレンコフ望遠鏡に要求される精度1分角を切る指向精度が得られることがわかった。しかし、望遠鏡に取り付けて測定する際には、望遠鏡鏡面による反射電波の影響で測定が不安定になることが判明し、課題を残した。以上の研究成果および経過をまとめ、日本物理学会大会において報告した。
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