超高エネルギーガンマ線天文台の将来計画として、移設式(電池制御式)解像型大気チェレンコフ望遠鏡アレイ(モバイルテレスコープアレイ)計画を提案し、その実現に向けたR&Dを行っている。平成22年度に進展があった主な開発項目は以下の3つである。1)電子回路システムの低消費電力化:平成21年度に、当初予定していたフラッシュADC再利用回路から、より消費電力の小さいアナログメモリーセル(AMC)ASIC回路に開発目標を変更した。本年度は、前年度に試作したAMC ASICの性能評価結果を考慮し、2回目の試作を行った。この試作品では、これまでASIC外の基板上に実装していたセル電圧を記録するためのADC(ウィルキンソン型)をASIC内に取り込んだため、消費電力がさらに改善される。また、AMCを効率良く利用するために各信号の伝送線に光ファイバー遅延線を導入する予定であるが、その小型化を目的とした遅延モジュールの試作を行った。小型化に伴う信号ノイズ(自己干渉)が試作モジュールにおいて無視できることを確認し、実用化の目処が立った。2)大容量電池の調査と開発:大容量電池システムの有力候補として車載用リチウムイオン電池を購入し、鉛蓄電池と比較しながら、出力電圧安定性等の性能の評価を開始した。3)試験観測用望遠鏡の準備:開発中のシステムを組み込み、試験観測を行うための小型(口径3メートル)大気チェレンコフ望遠鏡を東京大学宇宙線研究所明野観測所に設置した。甲南大学より中古の大気チェレンコフ望遠鏡を譲り受け、付属する駆動モーター等の修理および再塗装の後、明野観測所に移設した。既に望遠鏡をマニュアル駆動できる状態であるが、さらに天体追尾が可能なPC駆動制御システムを整備し、また、劣化した望遠鏡面を再蒸着する必要がある。以上の研究成果および経過をまとめ、日本物理学会大会において報告した。
|