暗黒共鳴超放射の標的原子であるBaは、この研究に適した3準位系であり、また原子ニュートリノへ向けた研究にも適した原子である。一方、やや反応性が高く、固体金属Baを600℃程度の高温で蒸気にして使用する予定であり、その取り扱いは簡単とは言えない。このため本年度はBaガス標的の準備を主に行った。Baのガスセルについて使用経験を積んだ結果、石英ガラスとの反応性が高く、長期間の使用、特に高温での使用時にガラスが黒変し、使用出来ないことが判明した。その代替として、当初から候補の1つとして検討していたヒートパイプセルをテストした。ヒートパイプは、密閉された金属パイプで、外部から加熱し、内部のBaを気化させ、Baガスを作る。両端に石英ウィンドウを設置するが、両サイドから希ガスを導入することで、Ba蒸気をパイプ中央部に保持する。パイプ内部には金属メッシュが設置され、毛細管現象で一様温度の液体Baが金属パイプ内部を満たし、この気液平衡により、一様なガス密度のBa蒸気を保持する仕組みである。岡山大学との共同研究で、これを製作し、性能を評価した。結果、まだ完全に動作を理解出来ていないものの、必要な性能を得ることが出来、研究遂行に支障無く使用可能であるという結論を得た。一方、1500nmレーザーについても使用中であり、よく稼働している。さらに1500nmの赤外領域に対応する波長計を準備し、これについても必要な性能を発揮している。
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