研究課題
素粒子の標準理論ではπ^+→e^+ν_e崩壊はヘリシティー抑圧されており分岐比が非常に小さい。そのため、ヘリシティー抑圧されない新しい物理現象に対して、その効果が大きく増幅して観察される特別な崩壊モードとなっている。本研究の目的は、π^+→e^+ν_e崩壊とπ^+→μ^+ν_e崩壊の相対的な分岐比(R_e/μ)0.05%の精度で超精密測定することにより、標準理論を越えた現象を探索する事にある。本年度は昨年度に引き続き、2010年4月から12月に渡って長期間のデータ収集を行った。そのため、日本グループが責任を持つ波形記録デバイスに関して、リモートで管理をしやすいようにインターフェースを改良した。カナダTRIUMFへの長期滞在や、インターネット経由でのリモートアクセスなどを活用しながら、収集データの品質確認を継続的に行ってこれまでにおよそ4×10^6個のπ^+→e^+ν_e崩壊を記録する事に成功した。陽電子のエネルギー測定に使用している大型NaI(Tl)単結晶クリスタルカロリメータの性能に関して、2009年に行ったビームテストの結果をモンテカルロ計算と比較することにより、光核反応を含めて本カロリメータの動作を深く理解するに至った。また、カロリメータの性能として、70MeVのエネルギーにおいて2.2%(FWHM)を得た。さらにCOMET実験と共同で、GSO結晶(20×20×120mm)50本をMPPCで読み出すタイプのカロリメータを試作し、東北大学・電子光理学研究センターにおける電子ビームを用いた試験に貢献した。現在MPPC読み出しの非線形性を考慮した解析を行っている。
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Nucl.Instrum.and Methods, Phys.Res.A
巻: 621 ページ: 188-191