平成22年度は、おもに、平成21年度秋に行った実験の解析を行った。以下に詳しく述べる。 ベータ崩壊事象はビーム事象と独立に発生し、かつ両事象を同一の検出器で測定するため、両事象を効率良く収集するためには工夫が必要であった。新たに開発した100MHzのクロックを持つタイムスタンプモジュールを用いた新しいデータ収集システムは設計通り動作し、効率的なデータ収集ができた。ゲルマニウム検出器に関しては、検出器からの信号を2つに分けて、これまでの回路(アンプ増幅+ADC)と本科研費で購入したCPU内蔵のDSPモジュールの両方でデータ収集を行い、その2つの結果を比較検討した。DSPモジュールの仕様に不備があったため、現在改良を依頼中である。それによって効率が大幅に向上することが期待できる。 RIBF加速器でウラン238を一次ビームとして不安定核二次ビームを生成させ、その二次ビーム中に含まれるZr-110周辺の不安定核に焦点を絞り、ベータ崩壊の寿命やベータ崩壊後のガンマ線放出、さらには二次ビーム中に少量含まれるアイソマーからのガンマ線を同時に測定し、そのデータ解析を行った。複数の不安定核について世界で初めてベータ崩壊の寿命が測定できた。Zr-110周辺の不安定核の寿命は宇宙における元素合成プロセスにとって非常に重要なデータであり、今後の進展が期待できる。また、ガンマ線の測定により、この領域の原子核構造に関する新しい知見が得られており、核の形状等に関しての研究も進展した。これらの成果について、国内外の研究集会で口頭発表するとともに論文としてPRL等に掲載された。
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