本研究の目的は、原子核・素粒子の基礎物理学実験に最適の二次荷電粒子ビームを供するため、粒子選別機能を有し大強度ビーム環境下でも長く安定に動作する放射線耐性が高い『磁場共有型の静電型粒子分離装置』を完成することである。 既存のESセパレータを活用した実機ともなる試験機の電極の健全性の確認を行った後、真空試験、コンディショニングを実施した。最終年度として、ハドロン実験ホールK1.1BRビームラインの第一セパレータとしての運用への試みを行った。実際の二次ビームによりビーム光学の調整を行い、K中間子などの二次粒子の収量や、ESセパレータの性能の指標となるK中間子/π中間子比を測定した。 主な項目と内容は以下の通りである。 1. 使用されている各構成部品について耐放射線化の検討を進めた。 2. 正負の電極の平行度、真空槽に対する取付け精度を再度測定し、再調整を行った。 3. 電極形状に対する電界計算を行い内部での電界緩和を試み、高電圧を印可し耐電圧試験を行った。 4. ハドロン実験ホールK1.1BRビームラインに設置した。設置作業の効率向上と位置精度の再現性の確保のためにピボット方式を採用した。 5. ビームライン全体として真空排気を行い、十分な到達真空度が得られる事を確認した。 6. この静電粒子分離装置により、K中間子ビームの強度とK/π比ともに、実験に使用できる十分な値を実現できることを確認した。 本研究により、研究成果を電磁粒子分離装置等に関する国際会議EMIS2012において平成24年12月に発表した。
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