研究概要 |
最大製膜できるHBC-フォイルの厚さの製膜試験をした。炭素中のボロン混合量20%の場合、最大700ug/cm^2の厚さのフォイルが出来ることが分かった。HBC-フォイルの密度、熱伝導率、室温抵抗、スパッタ率についての特性評価試験を行い他のテストした他の炭素フォイル、例えばCM,CNT(カーボンナノチューブ)フォイル,それにダイヤモンドフォイル等と比較した。この中でHBC-フォイルの密度と熱伝導率はもっとも低かった。HBC-フォイルの寿命評価試験は照射イオンビームのエネルギーとイオンの異なる3種を用いて即ち米国ロスアラモス研究所の800MeV120uAの線形加速器のパルス負水素イオン,KEKの650keV、200uA DCコッククロフト加速器の負水素イオン、それに東工大(理)の3.2MeV DCヴァンデグラーフ加速器のネオンのイオンビームを用いて測定した。テストしたフォイルの厚さは約340ug/cm2のシングルとダブル(170ug/cm2x2)のHBC-フォイル,併せて市販のCM,ナノ結晶ダイヤモンド、DLCそれにCNTフォイルを比較のために測定した。その結果イオンビームのエネルギーとイオン種に関係なくHBCフォイルはシングルとダブルフォイル共に250h以上の寿命を持つことが分かった。CMとDLCフォイルは約1h,ナノ結晶ダイヤモンドフォイルは20hを示した。ただしシングルHBCフォイルはビーム照射面に於いてわずかのピンホールが観測されたがダブルは全く観測されなかった。又HBCフォイルは大きな変形は見当たらず膜厚減少は20%以内であった。東工大とKEKの場合、ビーム照射時間に制限があったので測定は約250hで一時停止した。HBCフォイルの寿命は市販とDLCフォイルのの200倍、ナノ結晶ダイヤモンドフォイルの100倍以上の長寿命を呈した。このテスト結果からHBCフォイルは2000±300Kの高温環境下でも高耐熱性であることが分かり、MWクラスのビーム出力を出す大強度陽子加速器の荷電変換フォィルとして使用できることが立証された。
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