研究概要 |
今年度は超高真空極低温において、Au,Ag,Cu,Pt,Fe,Co,Ni金属接合に水素やベンゼンを導入して、単分子接合を作製し、伝導度計測および振動スペクトル計測を行った。 水素導入によりCoのコンダクタンストレースにおいて単原子接点を示すプラトーの著しい伸長が観測された。定量的にプラトー長解析を行うことでCo単原子ワイヤーの形成が明らかになった。従来3d金属のCoは原子鎖を形成しないと言われていたが、水素導入により原子鎖が安定化されたものと考えられる。観測されたCo単原子ワイヤについて振動分光を適用した。その結果、Coフォノンに加えて、水素とCo間の振動に対応する振動モードを観測することに成功した。理論計算や他のバルク系の結果を参考にして、構造モデルを提案することに成功した。 また水素中におけるAu接合ではフォノンにより誘起された水素単分子接合の構造転移を示唆する結果を得た。水素中Au接合のdI/dV特性を測定すると、対称的なピークが観測された。過去の実験結果との比較から、フォノンにより誘起された水素単分子接合の構造転移に示唆することが示された。そしてこのピークは重水素接合では観測されず水素中でのみ観測される事があきらかとなった。水素と重水素の振動エネルギー、および構造転移に必要な活性化エネルギーを考慮することで、水素では構造相転移が置きやすく、重水素が起こりにくいことを説明した。
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