初年度は、プラズモニック結晶を含む様々な金属表面ナノ構造を介した表面プラズモンポラリトン(SPP)と光との相互変換機構の研究を行った。具体的には、放射光検出システムが組み合わされた既存の透過型電子顕微鏡(JEM2000FX)を本体にして以下の実験を行った。 1) 試料を取り囲む放物面ミラーと干渉しないような光ファイバーを使った放射光検出を可能にする試料ホルダーを開発した。電子顕微鏡内にファイバーを挿入しX方向に位置調整ができる機構を備えた試料ホルダーの先端部を新たに作製した。 2) マグネトロンスパッターソースにより、ナノサイズの微粒子から成る質の高い銀の蒸着膜で表面ナノ構造の作製ができるようにした。 3) 表面ナノ構造としてサイズの異なる表面ステップ、矩形状ストライプ、ストライプの1次元周期構造および2次元プラズモニック結晶を「ナノテクノロジー・ネットワーク:超微細加工」に依頼して作製し、表面プラズモンポラリトンによる放射を調べる実験を行った。 表面ステップではビーム走査スペクトル像に現れる干渉縞の解析からSPPの分散関係が得られることが分かった。1次元および2次元プラズモニック構造についても、電子ビームを固定し放射角を変えて測定する角度分解放射スペクトルの測定から伝播するSPPの分散関係を導くことができた。さらに、放射角を適当な角度に固定して測定したビーム走査スペクトル像の観察からプラズモニックバンド構造におけるバンド端のSPP定在波を可視化することができた。
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