研究概要 |
2次元電子系を近接して2層配置した量子ホール状態は、層間のクーロン相互作用により2層の電子が協調して新しい量子ホール状態を形成する。特に層間相互作用の強い場合、ランダウ準位占有率ν=1および2の量子ホール状態は2層の電子密度差を任意に変えても安定に存在する。充填率がν=1から少しずれたところで、2層系ν=1状態から1層系ν=1状態へ代わるとき、基底状態は擬スピンスカーミオン格子からスピンスカーミオン格子へ連続的に代わることが期待される。ν=2/3量子ホール状態のスピン転移を利用した核偏極を行い,ν=1量子ホール状態での核スピン緩和を測定したところ、2層系から1層系へ向かって連続的に緩和が早くなる現象を発見した。このことは擬スピンとスピンの混じった励起モードが存在することを示し、基底状態も同様に擬スピンとスピンの混じったテクスチャであることを示唆している。また2層に独立に電極を付けた試料で、ゲート電極からマイクロ波を照射しながら層間のコンダクタンスを測定するために,希釈冷凍機へスプリット横型超伝導マグネットとマイクロ波測定装置を組み合わせる作業を進めた。この試料には独立なコンタクトを取るためた,端子部分の電子密度を調整する多数のゲート電極が必要である.そのため多数の電極を持ったサンプルホルダーをマウントできるようにクライオスタットの改造を行った.試料を冷却して実験ができるようになり、マイクロ波照射をしながら層間コンダクタンスの測定を行える段階に至った。
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