研究課題/領域番号 |
21340094
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00192526)
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研究分担者 |
鴻池 貴子 東京大学, 物性研究所, 助教 (70447316)
内田 和人 東京大学, 物性研究所, 技術専門職員 (20422438)
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キーワード | グラフェン / ディラック電子 / 量子ホール効果 / メゾスコピック系 / ベリー位相 / 電界効果トランジスタ / 2層グラフェン / 端状態 |
研究概要 |
本研究の目的は、単層および少数層グラフェンの磁場中伝導現象に現れる2次元Dirac電子系特有の新しい物性、特に位相や形状に関連した幾何学的(トポロジー的)効果の実験的探索と解明であり、対象とする問題は(1)特異な量子Hall状態の端状態と電荷・スピン輸送、(2)複数層グラフェンのDiracコーン構造とBerry位相、(3)Dirac電子のメゾスコピック効果である。 本年度は(1)グラフェン試料作製技術の確立、(2)パルス磁場下でのグラフェン伝導測定、(3)極低温下の複数層グラフェンの実験(課題(2))を計画した。(1)については、単層(および複数層)グラフェンFET素子の作製・評価技術を確立した。また局所的キャリア濃度変調用の微細トップゲート付きFET試料の作製法も確立した。結果的には、光学顕微鏡像の色調デジタル増幅によるグラフェンの可視化、SiO2によるトップゲート絶縁膜形成、さらに電気的評価の静電対策が重要であった。(2)については現有の20kJ小型コンデンサ電源で小型パルス磁石を駆動する装置を整備し、ピーク値40T・幅5msのパルス磁場下でグラフェンの直流伝導測定を行うことに成功した。しかし強磁場の印加によるスピン分裂の効果は観測されなかった。これは散乱ボケがスピン分裂より大きいためで、試料の移動度の改善は必須の課題である。(3)では極低温実験にはまだ至っていないが、その過程で多層グラフェンFET素子のゲート特性における電荷中性点の顕著な磁場依存性を見出した。この原因として層間スクリーニング長の磁場依存性を指摘したが、その実証実験は次年度の課題となった。以上に加えて(1)の技術を用いて、次年度に予定していた課題(1)用の単層グラフェン2重pn接合素子(p/n/p型・n/p/n型)を作製し、端状態伝導で説明される異常な量子Hall効果の観測に成功した。詳細な研究は次年度以降の課題である。
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