超流動ヘリウム4中に存在するヘリウム結晶を自由に駆動する技術を確立し、究極の清浄表面を有するヘリウム量子結晶を用いて摩擦の研究を行うことを目的とする。本年度は、ピエゾ素子を用いたインチワーム駆動法で、極低温化でのステンレス試料の駆動に成功した。極低温でのステンレス試料間の摩擦力の測定も行った。また超流動ヘリウムとヘリウム結晶が共存する融解圧において、ヘリウム結晶中にステンレス試料が埋もれた状況下でも、ステンレス試料を駆動することに成功した。ピエゾ素子の極低温高圧下での動作に問題ないことが確認され、ヘリウム結晶への適用へあと一歩のところまでこぎつけた。 エアロジェルによる乱れが、固体表面へ及ぼす摩擦の影響も調べた。これまでに、高温では固液界面が滑らかに成長し、低温では雪崩的に成長するという動的転移を見せることが分っていた。成長速度と核生成確率の温度依存性をより系統的に測定し、滑らかな成長は熱揺らぎによって乱れを超えていること、雪崩的成長は量子トンネリングにより乱れを超えていることが結論できた。また雪崩のサイズ分布はべき乗則に従い、古典系での摩擦現象でも見られる自己組織化臨界性が、乱れの元で進行する極低温での一次相転移にも現れることが確かめられた。またエアロジェル中に取り残された液体領域が、冷却により更なる低温で再結晶化する現象を発見した。結晶化には質量輸送が伴うはずであり、この再結晶化には液体を取り囲む固体の超固体転移が関わっている可能性があり、研究を継続中である。 微小重力下にあるヘリウム結晶に超音波を照射して、界面を大きく変形し、結晶化波の駆動が可能であることを見出した。また比較的大きな超音波パルスを用いて、ヘリウム結晶を駆動し、超流動液体中へ浮遊させることにも成功した.
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