研究課題
本研究では、強相関電子系超伝導体の純良単結晶を用いて、マイクロ波領域の高周波測定により、サイクロトロン共鳴の観測や、準粒子低エネルギー励起の研究を通して、超伝導体の電子状態を明らかにすることを目的としている。平成21年度において、以前の1.5Kまでの測定系に加えて、より低温の0.4Kまでの測定が可能な極低温マイクロ波空洞共振器の開発に成功した。具体的には、TE011モードで41GHzの共振周波数を持つ空洞共振器を設計・作製し、3Heの循環システムにより0.4Kまでの極低温下、14テスラまでの高磁揚下での動作に成功した。これを用いてURu2Si2や鉄系高温超伝導体の予備実験を行い、超伝導転移を観測するに至っている。今後これを用いたサイクロトロン共鳴の詳細実験を予定している。また、並行して超伝導空洞共振器を用いて様々な鉄系超伝導体単結晶の磁場侵入長の測定を行い、準粒子励起を明らかにした。特筆すべき成果は、ホールドープ型の(Ba,K)Fe2As2単結晶においては、磁場侵入長が低温でほぼフラットな温度変化を示し、準粒子低励起のないフルギャップ超伝導体であること、さらに等価置換系BaFe2(As,P)2単結晶においては、正反対に低温で温度に比例する振る舞いから超伝導ギャップに線上にゼロ点が存在する非従来型の超伝導が実現していることを明らかにした。この結果は、鉄系超伝導体の超伝導発現機構を考える上で、非常に重要な情報となると考えられる。これらの成果は非常に注目を集めており、物理学会のシンポジウムを始め多数の招待講演にて発表し、世界的にも評価されている。
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http://kotai2.scphys.kyoto-u.ac.jp/index.php