研究課題
本研究では、強相関電子系超伝導体の純良単結晶を用いて、マイクロ波領域の高周波測定により、サイクロトロン共鳴の観測や、準粒子低エネルギー励起の研究を通して、超伝導体の電子状態を明らかにすることを目的としている。平成22年度においては、以前の0.4Kまでの測定系に加えて、より低温の0.08Kまでの測定が可能な極低温トンネルダイオード発振器を用いた超伝導体磁場侵入長の超精密測定システムの開発に成功した。具体的には、数10 MHzの周波数領域での発振回路のコイル部分に試料を挿入することで、コイルのインダクタンスの変化を発振周波数の変化量として測定しており、発振回路およびコイルの温度を精密に制御し、試料のみを温度変化させることで、1オングストローム以下の磁場侵入長の変化を測定可能となった。これを用いて重い電子系や鉄系高温超伝導体の超伝導ギャップ構造にゼロ点があるかないかを微小単結晶試料で判定可能となる。今後これを用いた磁場侵入長の詳細実験を予定している。また、並行して、重い電子系超伝導体URu2Si2の磁気トルク測定により面内異方性を調べたところ、17.5Kの「隠れた秩序」相転移温度以下で、結晶構造からは期待されない2回対称成分が出現することを明らかにした。この結果は25年にわたり謎とされてきたこの秩序相での対称性の破れが、回転対称性の破れであることを明確に示すもので、この秩序相の理解に大きな進展を与えるものである。さらに、マイクロ波空洞共振器を用いてURu2Si2のサイクロトロン共鳴の詳細測定を行った。その結果、[100]方向から[110]方向へ磁場を回転させると、サイクロトロン質量が分裂することが明らかになった。これはこの系の隠れた秩序相において、電子状態が回転対称性を破るネマティック状態となっていることを示す結果であり、トルク測定を裏付ける重要な結果であると考えられる。
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