研究課題
8keVでの硬X線光電子分光(HAXPES)、500-1200eVでの軟X線光電子分光(SXPES)ならびに8.4、10.0、11.6eVでの極低エネルギー光電子分光(ELEPES)を組み合わせて、強相関係物質の総合的な光電子分光を行った。これにより真のバルクの電子状態を議論することが可能となった。まず光電子放出の際の原子核反跳効果の議論を行った。重い電子系LiV204では全原子が反跳効果を示すことが明らかとなったのに対し、金属一絶縁体転移を宗すVO2ではVも0も反跳効果を示さないことが分かった。また金属-絶縁体転移を示すマグネリ相の金属相については、0は原子核反跳効果を示すのに対しVは示さないことも分かった。これらは原子間距離にも弾く依存するものと考えられる。またVO2で金属-絶縁体転移時に顕著となるV-V間のdimerization効果はV6011では顕著なものの、V509ではほぼ無視できることも明らかとなった。LiV204のELEPESではフェルミエネルギーより上に高い状態密度を持つ電子状態の存在が示唆され、それが重い電子的振る舞いにかかわっていることを明らかにした。123KにVerwey転移を持つマグネタイトFe304のHAXPESスペクトルとELEPESスペクトルの温度変化を100-330Kの範囲で詳細に測定した。Fermi準位から約0.5eVの範囲でのスペクトル変化は両者矛盾が無く、バルク電子状態を反映している。Verwey転移温度よりわずかに高温側のスペクトルでは依然としてFermi準位での光電子放出強度は弱く無視できるが、さらに250K、330Kとなると有限な強度が見られる。この振る舞いはポーラロンモデルでよく理解できる。
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