研究課題
私はここ10年来、強相関系物質の総合的な光電子分光を行っているが、バルク敏感性についてはこれまで論争が続いている。私はこの課題に世界でもっとも真剣に取り組んでいる研究者である。8keVでの硬X線光電子分光(HAXPES)、ならびに8.4、10.0、11.6eVでの極低エネルギー光電子分光(ELEPES)を組み合わせての研究から、どのような場合にELEPESでもバルク敏感性が出現するかを明らかにしつつある。これにより世界ではじめて高い信頼性で真のバルクの電子状態を議論することが可能となった。今までのところLiRh2O4やFe3O4などはELEPESでのバルク敏感性が確認された。一方で角度分解ELEPES測定したCu(111)やBi2Te3では表面準位やDirac-coneなど表面電子状態が強く観察される。これはこの波数域にバルク電子状態が存在しなかったり、フェルミ準位の直上直下両方の電子状態密度が高く場合に電子の非弾性散乱が起こりやすいためと理解できる。平行して光電子放出の際の原子核反跳効果の研究を継続している。全原子が反跳効果を示す重い電子系Liv2O4、VもOも反跳効果を示さない金属相のVO2、Oは反跳効果を示すのに対しVは示さない金属-絶縁体転移を示すマグネリ相の金属相に加えて、超伝導物質V3SiでもSiは反跳効果を示すがVは反跳効果を示さない事を発見した。フェルミ準位近傍の価電子反跳の振る舞いから、他の手法では難しい部分状態密度が評価できることが分かり論文を準備中である。meV分光光源としては遠赤外自由電子レーザーが有効なことが知られており、現在阪大産業科学研究所のFELを用いた研究を準備中である。一方で電子蓄積リングからも赤外光が放射されているのでUVSORを用いた赤外分光を開始した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定した走査トンネル顕微鏡によるmeV分光に加えて、テラヘルツ光によるmeV分光にも成功したことで当初予定の倍の成果に近づいている。
テラヘルツ分光をさらに強力に推進することを考えている。その際左右円偏光による2色性測定にも挑戦する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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