研究概要 |
本研究の研究目的は,f電子系化合物における高圧、強磁場、極低温下の極限環境下でのドハースファンアルフェン(dHvA)効果や磁気抵抗の実験により、量子臨界領域で発現する超伝導とフェルミ面との相関を明らかにすることである。これらの系の超伝導は、磁気揺らぎあるいは価数揺らぎ,構造的な不安定性と深く関連していると考えられており、その電子状態の不安定性と超伝導をフェルミオロジーの観点から明らかにする。そのために,純良単結晶育成や,高圧力実験・強磁場・極低温実験をおこない,圧力誘起超伝導体を中心として,その量子臨界点近傍における電子状態の変化と,磁性,超伝導の関わりを明らかにしていく。 本年度は,Yb化合物における圧力誘起超伝導を目指し,YbT_2Zn_<20>(T:Ir, Co, Rh), YbPd_5Al_2, YbNiX_2(X:Si, Ge), YbCoIn_5の単結晶育成と磁性およびフェルミ面の研究を行なった。また,参照系として,他の希土類元素を持つ化合物や,カゴ的な構造を持つRCd_<11>の研究を行なった。YbCo_2Zn_<20>は電子比熱係数γ=8000mJ/K2molととてつもなく大きい重い電子系物質であるが、dHvA効果の観測に成功した。さらに0.6Tと非常に低い磁場下で重い電子系に特徴的なメタ磁性を示すことを見いだした。メタ磁性が起きた後は急激にサイクロトロン有効質量が減少しており,磁場ゼロでは500m_0に達する重い電子を持つことを明らかにした。さらに,加圧下での実験から,約1.5GPaの圧力で反強磁性を示唆する振る舞いを見いだした。また,YbIr_2Zn_<20>の参照系PrIr_2Zn_<20>のdHvA効果の実験を行なった。PrIr_2Zn_<20>のフェルミ面はYbIr_2Zn<20>のフェルミ面とは大きく異なっており,PrIr_2Zn_<20>ではf電子が局在的であるのに対し,YbIr_2Zn_<20>ではf電子が遍歴的でることを明らかにした。
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