研究概要 |
Ba1-xSrxV13018の電荷/軌道整列とマルチクリティカリティ AV13018(A=Ba, Sr)は、Vと0がNaCl構造から規則的に欠損した構造をとる。すなわちVは規則的に欠損したfcc構造をとる。この物質の多結晶試料を作製し、その電気抵抗と帯磁率を測定したところ、SrV13018では270Kで、BaV13018では210Kで、それぞれ異常が起こることが明らかになった。しかし、低温の構造解析の結果、この2つの低温相は全く異なることが分かった。SrV13018もBaV13018も高温では、中心Vの周りをV四量体(三量体2つが辺でつながったもの)6つ(2つずつが等価)が取り囲む構造をしている。すなわち、13個のVが中心V1つと3つの非等価な四量体に分かれる。SrV13018の低温相では、放射光x線粉末回折実験より、中心Vと2つの四量体から1個ずつのVによって新たに1つの三量体が形成され、V1個をとられた2つの四量体は2つの三量体へ変わり、1つの四量体が残るという、「3つの三量体と1つの四量体」という状態となることが分かった。一方、BaV13018では、放射光x線粉末回折実験では転移温度の上下で大きな変化は見られなかったが、電子線散乱実験の結果、0 1/2 1/2の超格子が現れることが明らかになった。その詳細は明らかではないものの、なんらかの電荷整列相転移であることが予想される。 さらに、この2つの混晶系Ba1-xSrxV13018を作製した結果、この2つの相はx=0.3あたりで競合し、SrV13018の相がBaV13018の相よりも低温相として張り出した相図をとることが分かった。特に、相境界付近の物質は、帯磁率の相転移での減少が大きい等、相境界特有の振る舞いを示すことが分かった。
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